発音記号を覚えて、口の形を習って、声に出してみる。
その前に、決定的なものが抜けています。
日本の発音練習は、たいてい「知識を入れて、声に出す」の順で進みます。発音記号を学び、舌の位置や口の形を教わり、そのとおりに発音してみる。うまく言えているか分からないまま、何度も繰り返す。
ここで抜けているのが音の記憶です。目指す音が頭の中にない状態で口を動かしても、出た音が合っているのか外れているのか、自分では判定できません。判定できないものは、直せません。
特徴を学ぶ → 声に出す → 出た音を聞いて「こんな感じかな」と確かめる。
答えを知らないまま、当てにいっている状態。
正しい音を先に知る → 頭の中で鳴らせるようにする → そのあとで声に出す。
答えを知ってから、そこへ合わせにいく。
僕は絶対音感を持っています。ただし、生まれつきではありません。9歳を過ぎてから、自分で耳トレを始めて身につけたものです。一般に「6歳ごろまでに始めないと無理」と言われている、あの絶対音感です。▶ 11:00
きっかけは面倒くささでした。ギターで曲をコピーするとき、毎回いちいち音を探すのが嫌になり、「聞いたらそれがどの音かすぐ分かるようになりたい」と思った。それで独自のトレーニングを始めます。
そして大人になってから、こう気づきます。あの時やっていた耳トレと、発音でいう「音の記憶」づくりは、同じことをしている。▶ 16:19
もしかして「絶対音感は才能がなければ無理」というこの常識も、「一定の年齢を超えたらネイティブ発音は無理」という常識と同じように、間違っているのかな。 — 発音ライブ 82(2026年8月9日)
よく紹介される耳トレは2種類あります。ひとつは「ドを覚えたいならドを聞きまくる」。もうひとつは「鳴った音を当てにいって、答え合わせをする」。僕も最初はこれを試して、まったく分かりませんでした。▶ 22:26
そこで方法を逆にしました。
2年ほどでそれは完成しました。「ああ、ほんまや」と思える音が、ひとつずつ増えていった結果です。
英語の音も同じです。æ の音を練習する前に、æ がどんな音かを頭の中で鳴らせるようにする。鳴らせるようになってから、口を動かす。順番はそれだけです。
音の記憶は、4段階に分かれています。
発音に必要なのはレベル4です。レベル3では足りません。聞けば分かる、では、自分の発音を判定する基準になれないからです。
発音記号を覚えることでも、口の形を練習することでもありません。目指す音を、頭の中に持つこと。それができて初めて、練習が練習として成立します。
そして絶対音感の話が示しているのは、それが大人になってからでも作れるということです。才能の問題にされてきたものが、実は方法の問題だったのかもしれない——僕が発音について言い続けているのと、まったく同じ構造の話です。